●ミネラルの重要な五つの働き
病気体質を根こそぎ変えるための条件として、ミネラルをバランスよく取ることが上げられます。
現代日本人の食生活を見れば、ミネラルの激減という重大な食生活の危機に陥っています。
ミネラルは微量元素といって、タンパク質、脂肪、炭水化物、それにビタミンなどと並ぶ五大栄養素の一つですが、体のなかではつくることができない栄養素です。このミネラルを食品から取ることで、私達人間は複雑な体のシステムを維持しているのです。ミネラルが重要だということは多くの方が知っています。しかし、なぜミネラルが必要かをご存じの方は意外に少ないものです。ミネラルには、大別すると2つの働きがあります。一つは素材としての機能です。素材とし ての機能の代表例は、たとえば骨を作るカルシウムやマグネシウムのような働きです。そしてもう一つの機能は、複合補助と呼ばれる働きです。ミネラルが発揮する複合補助機能のうち、次にあげる五つが重要なものです。@酵素をスムーズに働かせる
私達は栄養を食品から取り入れますが、そのままでは体に必要な栄養にはなりません。食品中の栄養分が細胞の生命維持に役立つようになる変化を代謝と言いますが、代謝機能をつかさどるものが酵素です。そして、ビタミンとミネラルがなければ、酵素は代謝機能を発揮できないのです。Aビタミンの活性化作用
ミネラルがなければ、ビタミンはその機能をほとんど発揮できません。ミネラルによってビタミンは� �性化され、共同で酵素を作ったりできるのです。B体のpHを弱アルカリ性に保つ
私達の体は、pH7.3くらいの弱アルカリ性が理想です。酸化体質になると疲労しやすくなったり、病気にかかったりしやすくなります。体を酸化する食物の代表は肉類ですが、そうした酸化食品を食べたとき、ミネラルは中和してくれる機能を持っています。C細胞の浸透圧作用を保ち、調整する
浸透圧作用とは、細胞膜を通しての栄養と不要物とのやり取りです。この機能に異常が生じると、細胞に栄養が届けられず、また細胞から不要物が排出されなくなります。ミネラルはこの浸透圧作用を正常に保つ調整機能を果たしています。Dミネラル同士の連携作用
それぞれのミネラルは主役としての顔を持ちますが、お互いに協力し合って体を健康に保つ機能を果たします。たとえば、カルシウムを吸収するためには、マグネシウムと一緒に取ったほうが吸収率がアップします。この働きが連携作用です。これほど私達の健康と関係の深いミネラルですが、ミネラルが不足してもお腹は減りません。ミネラル不足の信号は、私達の体調の悪化です。体調が悪化し、本格的な病気になってしまう前に、毎日きちんとミネラルを取ることが必要です。しかし、それほど重要なミネラルでありながら、私達の食卓からはミネラルが消えているのです。
● なぜ食卓からミネラルが消えたのか
日本人の食卓からミネラルが消えた理由は、大きく言うと二つあります。
一つは、食生活のスタイルが欧米風に変化してしまったことです。以前の私達の食事内容は、お米が主食でした。土中に含まれるミネラルをしっかり取り込んだお米を主食としていました。さらに、野菜やイモ類も今とは比較にならないほど食べていました。野菜といえば、いまは生野菜サラダが主流ですが、昔は煮たり茹でたりして食卓に並んだものです。もともと、日本の土壌はミネラルが少ない土壌です。ヨーロッパやアメリカの土壌と比較すると、土中のミネラル分は約三分の一から四分の一しかありません。その理由は日本の土壌が火山灰からできていることと、急峻な地形です。もともとミネラルの少ない火山灰の土壌から、雨水によってさ� �にミネラルが海に運び去られてしまうからです。日本の水はミネラル分の少ない軟水ですが、それも同じ理由からきています。
ミネラルの少ない土壌で作られるお米や野菜は、当然、ミネラルの少ないお米や野菜になります。しかし、昔の日本人はミネラル不足を量で補っていました。野菜を茹でたり煮たりすればそれだけ多く食べられ、必要なミネラルが取れたのです。そして、タンパク質源は主に魚でした。"海はミネラルの宝庫"と言われるように、海水中には様々なミネラルが豊富に溶け込んでいます。まだ、養殖技術も発達しておらず、食料にした魚類は自然の環境で成長したミネラルいっぱいの魚でした。その魚もミネラル分の多い小魚を骨ごと食べていたものです。
このように、昔の食卓はミネラル豊富な食材が並 びました。しかし、現代の私達の食卓には、そうしたミネラル豊かな料理は少なくなりました。
もう一つの理由が、もっと重大かもしれません。その理由とは、食材そのものにミネラルが少なくなってしまっているからです。
● 野菜からミネラルが消えた
私達の食卓からミネラルが消えたもう一つの大きな理由が、素材自体のミネラル不足です。
もともと日本の土壌にはミネラルが少なく、お米や野菜にはミネラル分が少ないことはすでに述べました。しかし、私達が今、口にする野菜やお米は、昔の野菜やお米よりもはるかに少ないミネラルしか含んでいません。もともと少ないミネラルをさらに減少させたものは、農薬と化学肥料です。
農薬や化学肥料は収穫を増やすために使われますが、その使用は土中のミミズやバクテリアを殺します。その結果、有機物は失われ、ミネラルも壊されてしまうのです。また、化学肥料には植物の三大肥料である窒素、リン酸、カリの三つのミネラルしか入っていませんから、植物は偏ったミネラル分しか吸収できないことになります。� ��のために、含まれるミネラルの種類の少ない米や野菜になってしまいます。農薬については、無農薬野菜、低農薬野菜といっても安心できません。現実には、どれくらいの農薬が使われているか、どれくらい強力な農薬が使用されているかはっきりしていないからです。しばらく前から健康志向が盛り上がり、化学肥料を少ししか使わない有機栽培が脚光を浴びました。有機栽培で作られる有機野菜であればミネラル豊富な野菜類と思いがちですが一概には安心できません。というのは、今の法律では、三年以上有機農法を行っている土地であれば、その作物は有機野菜を謳うことができるからです。
土地の改良には最低でも10年は必要とされています。それまで何十年と農薬を使ってきた土地です。わずか三年の間、化学肥料を 使わなかったからといって土壌はそれほど変わりませんし、ミネラルの種類と量が豊富な野菜が急にできるはずはないのです。
(100mgの含有量)
野菜に含まれる栄養素の変化(100g中) |
野 菜 | 1950年 | 1982年 |
ほうれん草 | ビタミンC | 150mg | 63mg |
鉄分 | 13mg | 3.7mg |
ニンジン | 鉄分 | 2mg | 0.8mg |
ダイコン | 鉄分 | 1mg | 0.3mg |
「日本食品成分表」より
● 肉類、魚類もミネラル不足に陥っている
私達の食卓に、いまや肉類は欠かせない食材になっています。この食肉の材料になる牛、豚、あるいは鶏は、人工飼育、あるいは促成飼育という方法で飼育されています。狭い飼育舎に押し込められ、タンパク質や脂肪のつきやすい餌を与えられ、病気にならないようにと大量の抗生物質も与えられています。
広々とした自然の中で飼育されれば、自然の草などからミネラルは体内に取り入れられます。しかし、狭い飼育舎の中に閉じこめられ、野草を食べられない動物達は必要なミネラルを取ることができません。もちろん、自然の中で飼育された動物達もいます。そうした動物達の肉にはミネラル分が多く含まれるかもしれませんが、値段はグーンと跳ね上がります。いつもそうした高い食肉を食べられる人は少ないはずです� �普通の主婦が買い、私達の食卓にのる食肉は、どうしてもミネラルの少ない食肉になってしまうのです。また、魚にしても事情は変わりません。
いま、見かける魚のほとんどは、養殖された魚です。養殖というとハマチ、ウナギがすぐに連想されますが、いまやタイ、ヒラメ、カツオなどといった魚まで養殖ものです。養殖されていない魚は、食物連鎖のなかで生きています。小魚はプランクトンを食べ、その小魚はより大きな魚の餌となります。しかも、ミネラルの宝庫である海のなかを自由に泳ぎ、海水からもミネラルを補給しています。
養殖魚には、そうした豊富なミネラルが期待できません。狭い生け簀のなかで成長を促進する餌を与えられ、多量の抗生物質を取らされています。自然環境のなかで十分にミネラルを取� �ていた昔の魚の面影がありません。私達はそうしたミネラルの少ない食肉を食べ、魚を口にしているのです。
● 調理の段階でもミネラルは失われている
米、野菜、それに食肉や魚といった食材に、昔ほどのミネラルは期待できません。そればかりでなく、調理の段階でもミネラルを失っています。もともと少量しか含まれていないミネラルを、加工の段階でさらに少なくしてしまっているのです。調理の段階でミネラルを奪う元凶は水です。食材を洗い、煮込み、茹でる際に使用する水に大きな問題があるのです。たとえば、米を例に取りましょう。ご飯を炊く前に、米を研がない家庭はないでしょう。少なくても三回くらいは研ぐはずです。この三回研ぎで多くのミネラルが奪われてしまいます。ある調査では、カリウム50%、マグネシウム53%、リン50%、鉄54%、マンガン33%、カルシウム23%、亜鉛10%がそれぞれ失われるとされています。これだけのミネラ� ��が失われる理由は、水に含まれる塩素です。塩素がミネラルを酸化してしまうのです。米だけではありません。魚や野菜を煮たり、茹でたりする際にも、塩素を含んだ水道水は使われます。ミネラルを酸化してしまう水で食材を洗い、さらに調理にも使います。鍋のなかの魚や野菜は、すでにミネラルの少ない材料です。その少ないミネラルしか持たない材料を酸化力の強い水道水で調理することで、私達はさらにミネラルを減らしているのです。もう十分にお分かりだと思いますが、私達の食事は材料からしてミネラル不足であるうえ、おいしく食べるためにミネラルが減るような手を加えています。その結果、私達の体は慢性的なミネラル不足に陥っているのです。
先に、ミネラルの持つ素材機能と複合補助機能の二つの大切な� ��能を紹介しましたが、それぞれのミネラルが主に担当する機能があります。いわば「主役としての顔」です。ここでは主なミネラルの顔について紹介いたしましょう。
「カルシウム」
カルシウムと言うとすぐに骨が思い浮かびますが、血液をアルカリ性に保っておく重要な役割を担っています。体内の99%のカルシウムは骨や歯をつくる材料になっていますが、残りの1%の半分が血液や神経、筋肉、臓器のなかにタンパク質と結合した形で存在し、半分はカルシウム・イオンとして存在しています。筋肉はカルシウムがあって初めて収縮できるので、カルシウムが不足すると心臓の筋肉の収縮力が低下します。また、カルシウムは神経細胞の働きとも密接な関係があり、カルシウムが不足する� ��イライラしたり、興奮するのはそのためです。「ナトリウムとカリウム」
ナトリウムは悪役のように言われますが、体液の量を調節したり、筋肉や神経の働きをスムーズに保つ働きをしています。また、カリウムは筋肉を動かすためのエネルギーを作り出し、カリウムの不足は無気力、食欲不振などの症状に結びつきます。そして、ナトリウムとカリウムは、体液の濃度バランスを協力して保つ重要な働きをしています。「リン」
リンはカルシウムと結びついてリン酸カルシウムとなり、骨をつくります。また、エネルギーを生み出すために働いたり、遺伝子本体や遺伝情報を伝えるDNAやRNAの成分にもなっています。さらに、体内の酸とアルカリのバラ� �スを取る働きもあります。「鉄」
体内の鉄の約65%は、赤血球のヘモグロビンの成分になっています。ヘモグロビンは肺で酸素と結びつき、体をめぐって酸素を各細胞に供給します。私達が生きていられるのは、このヘモグロビンによる酸素供給があるからです。「銅」
銅は、ヘモグロビンの合成に欠かせないミネラルです。したがって、銅の不足は血液中のヘモグロビンを減少させ、貧血を招く原因となります。また、銅は老化防止や健康維持にも重要な働きをします。私達の体のなかで発生する活性酸素は老化を早めたり病気の様々な原因になりましたが、その活性酸素を分解する酵素がSODでした。SODは亜鉛と銅を含んでおり銅の欠乏は老化防止や 健康維持に重要なSOD不足につながるからです。「セレニウム」
セレニウムはビタミンEの働きを助け、体内に過酸化脂質をつくらせない抗酸化作用があります。過酸化脂質が体内に増えると、血管の内側の膜をつくっている細胞が破壊され、そこから悪玉コレステロールが血管に侵入し、やがて動脈硬化に至ります。また、過酸化脂質は血管をつまらせる血栓の元にもなります。最近では、セレニウムの持つ制ガン作用に大きな注目が集まっています。その他、必須ミネラルにはマグネシウム、亜鉛、マンガン、モリブデン、リチウム、コバルト、クロムなどがあり、スズ、ニッケル、バナジウム、フッ素、ヒ素、ホウ素、臭素、カドミウム、鉛、ケイ素、リチウムなどの超微量ミネラルもあります。それぞれ私達の健康に重要な働きを持つミネラルですが、ここでの説明は省略させていただき� ��す。興味と関心のある方は、書籍がたくさん出版されていますのでご参照ください。
これらのミネラルはバランスよく取ることが重要です。バランスの偏った取り方を続けると害になる場合も生じてきますので、その点は十分に留意しなければなりません。
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